地が傾いて舞が舞われぬ

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「国境の海 日中 知られざる攻防」と「我々はなぜ戦争をしたのか」

対話する娘。遠くに掃海艇が見える


10/23の NHKスペシャル「中国人ボスがやってきた〜密着 レナウンの400日〜」 というのが面白そう。

先週録画していた「国境の海 日中 知られざる攻防」という、その内容が一部自衛隊関係者でしか共有されていなかった、自衛隊OBと中国人民解放軍の交流会を紹介した番組も凄かった。こういうことが30年以上続けられていたのかと。日本側は自衛隊OBの一般人、と言っても元統幕長を始めとして元将官の方ばかりだから、実質、これは自衛隊と人民解放軍のトップレベルの会談ということですよね。小泉元首相が靖国参拝して、日本大使館に派手なデモがあったりとかかなり冷え切った時期でも続けていたというからその切実度は並では無い。

10年くらい前、ベトナム戦争終結から30年たって、マクナマラと当時の北ベトナム将官との非公開討論をしたときのNHKスペシャルと本があった。北ベトナムと米国双方の優れた指導者同士でも疑心暗鬼になると、こんな些細な行き違い、認識ミスで和平交渉失敗、戦争継続泥沼化に繋がってしまったのかと驚く内容だった(「国境の海」でも元海幕長の方が「疑心暗鬼」という言葉を使っていましたね)。

しかも米国・北ベトナム双方とも30年経ってお互い「え、そうだったの」と言ってるくらいだから、これが同窓会で「え、おまえおれのこと好きだったん?」「うん、あの日ずっと待ってたんよ」みたいなアレとは話が違うわけで。プロジェクトのふりかえりって重要だな、っていやそういう話でもなくて、

つまり、この日本と中国の実質的な将官同士の非公式な対話というのは、そういう行き違いを防ごうとする試みなのだ。と言ったら "Do or do not, there is no try" と怒られそうなくらい本気の。もちろんこんな派手なメンツだから日中両政府の暗黙の了解の元にやっているんだろうけど。

例えば中国軍機が自衛隊艦に異常接近した件について日本側が「そんな不測の事態が起こりかねないことを許すとは人民解放軍は管理統制とれてんのか」と聞くと、中国の将官は「日本がおれたちの船の前にソナーをバンバン仕込んで挑発してるからだ」と反論し、自衛隊OBは「我が国は国際的慣習にそって国境で怪しい動きをする艦があれば、監視活動はするに決まってるだろ」みたいな(全部意訳)非常に生々しい「討論」が行われているのだ。再現シーン見ているだけでピリピリした雰囲気が伝わってくる。

もちろんこれは、このような突っ込んだ討論をする→互いが本音を話しているという信頼ができる→さらに互いに突っ込んだ討論ができる、という感じで、ピリピリした話もできる場を地道に培ってきた成果なのだ。

あ、1997年のハノイ対話の本は岩波の東大作「我々はなぜ戦争をしたのか―米国・ベトナム 敵との対話」という本です。著者はそのNHKスペシャルのディレクター。AMPで安く手に入るし、廉価版平凡社から出てるみたい。 こちら(id:hello2books:20101127)の日記なども面白いです(サイト名も素敵)。あと「マクナマラ回顧録」も興味深いですよ。


というか私が知らないだけで、近隣諸国とのこういうさまざまなパイプというのはどこも用意してあるものなのかもしれない(鈴木宗男が失脚したらカニの値段が上がった、みたいな)。中国海軍増強の話もあるなか、この交流会についていまNHKの番組で深くつっこんで公開されたというのは、またそれも何か意味があるのだろうか、と深読みしそうになったりして、外交というのは重層的すぎて素人には本当にわからない。

そういえばこの交流会を最初に呼びかけたのはトウ小平だったそうでやっぱあの人はタダモノではない。10年、100年先まで見通していたのではないだろうか。

以上、デイリースタンダップミーティングが重要だという話でした。

我々はなぜ戦争をしたのか (平凡社ライブラリー)

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マクナマラ回顧録 ベトナムの悲劇と教訓

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アジャイルサムライ−達人開発者への道−

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