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錆は眠らない、コタツで

suchi today hatenablog

射出座席で助かっている人は世界に何人くらいいるのか

結論から先に書くと、2016年6月末から2017年3月末までの8ヶ月間で、少なくとも世界で42名の方が射出座席で助かっている。

射出座席とは、飛行機(とくに戦闘機)が事故または攻撃により回復不能な状態になったときに、飛行機から乗員を座席ごと外に出してパラシュートで救う仕組みだ。漫画や映画、疲れたときに見てしまうYouTubeの航空機事故映像などで見ることができる。

映画ではトム・クルーズ主演の「トップガン」の射出シーンが有名だと思うけど、ボスニア停戦協定後に撃墜された米戦闘機パイロットの脱出を描いた「エネミーライン」も射出座席の観点からもおすすめだ。股の間の射出時バーを引いたあとの短い間に、コクピットのまわりのねじが火薬で破壊され、(おそらく墜落後に敵に情報を盗まれないために)電子基板やハードディスクも焼かれるところまでなぜかポップに細かく描写されている。どの見放題サービスも無料扱いされていたりBSで半年に一度やっているような映画ありますよね、この映画はその一つなので見やすいと思う。 

一人前のジェット戦闘機パイロットを養成するにはたくさんのお金と時間がかかると聞いたことがある。人道的な理由だけではなく、おそらくこれだけ複雑で高度な仕組みを用意するだけの価値がパイロットにはあるのではないかと思っている(軍事に関して素人なのでこのあたり全部推測です)

で、話を戻すと、もうきっかけは思い出せないが、Wikipediaの海で、射出座席の項目を読んでいたところ、射出座席を最初に実用化したイギリスのマーチン・ベーカーという会社を知った。世界の射出座席の80%のシェアを持つとのこと。そしてこんなことが書いてあった。

 マーチンベーカー社は1946年に初めて飛行中の航空機から人間の射出テストを行って以来合計で7,429名の生命を自社製射出座席で救った(2013年の時点で)と述べており、公式サイトのトップで生存者数を随時カウントしている。

マーチンベーカー・エアクラフト - Wikipedia

確かにこの会社のトップページに行くと、実際の射出事故や実験の画像とともに "TOTAL LIVES SAVED" という項目に、Web1.0風アクセスカウンタのような数字が誇らしく掲げてある。

ずっと数えているのか。

 f:id:suchi:20170402002415p:plain

これ見ると、いつ数字が変わるか知りたくなりますよね。あ、今日世界のどこかでが誰かが射出されたんだ、と。

ということで、このトップページからカウンタの数字を抜き出すスクリプトを書いてみた。こんな雑なスクリプト

scrape total lives saved count from martin-baker w ...

これを使って2016年6月27日から(ほぼ)毎日記録してみた。ところが毎日楽しみに数値を見ても最初の7497からまったく変わらない。

f:id:suchi:20170402002413p:plain

2ヶ月変わらないので、このカウンタの値が適当じゃないかと疑い始めていた。

そして、2016年9月12日、いきなり変わった。しかも +9。

なにか情報が無いかMartin Baker社のページを見たところFacebookページに「The latest ejection was out of a T-45 aircraft」との情報もあった。Tから始まるから、我が家の上空を飛んでいる自衛隊浜松基地のT-4みたいな練習機かな。

調べている過程でMartin Baker社のtwitterも知った。一般的な名前でアカウント名が取れなかったのか、東京カルチャーカルチャーみたいなアカウント名が可笑しい。

twitter.com

 

なんだ、値が変わったときにtweetしてるじゃないか、と気づいたのだ。しかも機種などの情報も込みで。こんな感じで。

軍事機密が多いせいか、担当者の怠慢か、余分な仕事なので暇になったときだけ更新しているのかよくわからないけども、リアルタイム更新はされていないこともわかったので、しばらく毎日記録してみて8ヶ月経った結果がこれだ。

f:id:suchi:20170402002410p:plain

3/8に2人増えたすぐ後の3/14に23人足していたり、情報入手か報告か、どこかの段階でタスクが滞留しているんじゃないかとか、私の仕事柄考えてしまった。

結果、8ヶ月に少なくとも世界で42名の方が射出されて助かっていることがわかった。あと、カウンター担当者は8ヶ月に8回しかこの仕事をしていなこともわかった。

どこかでリアル戦闘中に射出が行われているかもしれないし(ぜんぶ報告されるんだろうか)、映画みたいに大怪我や命に関わる話かもしれないので、よく考えるととてもシリアスでうかつに面白がることができないカウンタなのだけど、想像以上に世界では射出されるような状況が起こっていることはわかった。

現在も記録は継続中。エイプリルフールにこっそり30万とか嘘カウンタにしてたりして、とかちょっと思ったけど、もちろんそんなことはなかった。